★イベントレポート★
東京都オープンデータアプリコンテスト2018 作品発表会・表彰式

 3月24日(日)、東京国際フォーラムで、東京都オープンデータアプリコンテスト2018作品発表会・表彰式を開催しました。当日は、審査により選出された5作品の製作者による作品発表(プレゼンテーション)や受賞結果の発表・表彰を行いました。

  


 当日プログラム 

【メインステージ】

〔1〕作品発表(プレゼンテーション)

〔2〕トークセッション

〔3〕表彰式(結果発表)

  

展示スペース

〔1〕作品展示ブース

〔2〕来場者投票ブース

〔3〕アイデアソンキャラバン紹介ブース

  


 メインステージ  ・

〔1〕作品発表(プレゼンテーション)

No,1スポーツイベントカレンダー

株式会社ジョルテ

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No,2ruprun!

犬伏萌々子_海老澤大喜

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No,3しながわパパママ応援アプリ「こうえんしょうかい」

立正大学経済学部経済フィールドワーク1 外木クラス

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 No,4Ariake Tennis VR

唐鎌千里

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No,5リンククロス アルク

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社

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〔2〕トークセッション

□テーマ

『今後求められるオープンデータとは?~2020年とその後を見据えて~』

 審査員5名の方々に、作品審査を通じた感想や、各審査員が考えるオープンデータの活用として、「参考にしたいオープンデータの活用事例」や「今後求められるアプリ」、「サービスを生み出す製作者として持つべき視点」、そして、今後オープンデータを公開する自治体に対して望むこと等をお話いただきました。

 

□パネリスト

庄司昌彦氏 ≪モデレータ≫

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授

※武蔵大学社会学部教授 / 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員(2019年5月1日現在)

 

及川卓也 氏

一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)代表理事

 

村上文洋 氏

株式会社三菱総合研究所ICT社会イノベーション本部 主席研究員

 

矢野りん 氏

一般社団法人画像電子学会 会員

 

野川春夫 氏

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 特任教授

 

□コメント抜粋

〔庄司氏〕

  私たちは審査員として一通り、応募作品に触れ、色々な角度から議論をしてきました。そして本日、実際にプレゼンテーションを見たことで、より詳しく製作者の皆さんの意思や熱意を感じることができ、非常に良かったと思います。

 まずは審査員の皆さんに、本日のプレゼンテーションや審査会を踏まえて、一言ずつ感想を伺いたいと思います。

   

 

プレゼンテーションや審査会を通じた受賞作品・応募作品等に対する感想について

〔野川氏〕

 作品の完成度が非常に高いというのが第一印象でした。また、健康増進を目的とした運動を促すアプリの応募が目立つ一方で、スポーツそのものを楽しむアプリが少ないと感じました。

 その中にあって、『Ariake Tennis VR』は、テニスのルールや技術(動き)を疑似体験できます。VRを活用すれば水泳やスキー等、特定の場所でしか出来ないスポーツはもちろん、学校体育でスポーツを経験しないことが多い障害者に対しても、スポーツを疑似体験してもらえる環境を提供できるのではないか、そういった新たな発想をいただきました。

〔及川氏〕

 作品については、それぞれが非常に工夫され、完成度も高く、本当に感心しました。ただ、オープンデータの活用という点で、その方法について色々と苦労されている様子も垣間見えました。打開する方法としては、東京都や自治体のオープンデータを使いながらも、不足するデータについては自分達で作ってしまうのがいいのかもしれません。

 それは、オープンデータを公開する自治体への気付きにもなります。今後、そうした仕組みまで変えていけるような作品が出てくると、より面白くなるのではないかと感じました。

〔村上氏〕

 今回の受賞作品の多くは、既にサービス化されていたり、製作されていたアプリに対して、オープンデータを活用したというものでした。そういう意味で、オープンデータを活用して新たなアプリを作ろうとするよりも、既にある程度作ってある、又はサービスとして展開しているアプリに対して、何か新たな付加価値を加えるために組み込むことが有効な活用方法ではないかと感じました。

〔矢野氏〕

 自治体のオープンデータについて、『チャレンジ』される方が少ないというのが第一印象です。実際にサービスを製作し、運用するのは開発者の皆さんです。「今のオープンデータではこれぐらいのことしかできないです!」というぐらいのことをどんどんフィードバックしてもいいのではないでしょうか。

 また、野川先生とのお話の中で思ったのですが、スポーツをテーマにして、何かをデザインするとなった時に、スポーツに対する考え方の変化等について理解していないと、通り一片のサービス、例えばスポーツ施設を紹介するだけのアプリにしかならないような気がしました。スポーツの定義の変化や現在求められているものを理解し柔軟に考えることができれば、もっと新しい、面白いことを考えられるのではないかと思います。

 

〔庄司氏〕

 ここからは、事前に一般来場者の皆様からいただいた質問をもとに、トークセッションのテーマでもある、オープンデータを活用した好事例や、今後必要性が高まるサービスとはどういったもので、また製作者として求められる視点や考え方とは何か、といったところを掘り進めていきたいと思います。

(質問1)サービスの製作者側と利用者側との間にはギャップが生まれやすいものですが、どうしたらユーザーが求めるものを製作できるでしょうか。また、より多くの人にアプリを利用してもらうためには、何が必要でしょうか。

〔村上氏〕

 まずは、本当に自分が欲しいと思うサービスを作らないと使われないと思います。オープンデータの活用事例として、『カーリル』というベンチャー企業を紹介します。全国の図書館の蔵書や貸し出しデータを自社で集めて、どの図書館で、どういった本が借りられているかが分かるアプリを作っています。この会社は、絶対に受託開発はせず、自分達が必要だと思ったサービスを自社で作って提供するという強いポリシーを持っていて、それを10年近く続けています。

 こうした自分達が欲しいものを作り続けるという強い信念を持つということと併せて、自分達の思いだけではなく、ユーザーのニーズに応えていくことも必要です。

 その上で自分が本当に欲しいと思うサービスを作り続けるということが大切なんだと思います。

〔矢野氏〕

 村上さんのお話のとおり、自分自身の課題に向き合って、それをクリアにするというのが大原則です。ただし、自身の課題に向き合い続けていると、自分だけが使いやすいアプリを作ってしまい、それが他人にとっては全く使いやすくない、というデザイン上のパラドックスに陥りがちです。

 それを防ぐためには、例えば、自分以外の複数の人に初期段階でテストしてもらい、ユーザー側とのギャップを洗い出すことで、客観的な視点を加えるというのが基本になります。

 一方で、アプリを広めていくためには、口コミが重要です。どうしたらユーザー側から周りの人達に勧めてもらえるか、そこを狙ってみてください。

  


(質問2)アプリコンテストへの応募をきっかけにアプリ開発しても、その後継続して利用されなければ意味がないと思っています。継続して利用してもらえるアプリを作るためにはどうすればいいでしょうか。

〔及川氏〕

 私は職業柄、起業家やスタートアップ企業の方々に対してアドバイスをすることが多いのですが、成功する起業家の条件はとても簡単で、「続けられるかどうか」なんです。当たり前ですが、成功するまで続けた人は絶対に成功します。

 これと同じで、オープンデータを使ったアプリも、使われるまでしっかりと改良を続けていく信念があれば、使われるものになっていくと思います。

 その場合には、矢野さんが言われたように、そのサービスの本当の価値を考えざるを得なくなりますが、それが結果的により良い作品が生まれてくることにつながるのではないかと思っています。

〔庄司氏〕

 この問題は私もずっと考えています。

 オープンデータの良い活用事例で紹介すると、「Coaido119」という、119番通報をしながら、事前登録した周囲の医療有識者やAED設置者等にSOSを発信できる緊急情報共有アプリがあります。

 このアプリは、ハッカソンで生まれた後、本格的に開発することになり、イベント参加やクラウドファンディングによる会社設立を経て、大学や行政との実証実験や別企業と組んで投資家との接点を持ったりと、次々と機会を開拓していきながら、いつの間にか注目されるアプリに成長していきました。

 一般的なスタートアップとして投資家からの資金調達により企業としてやっていくケースもあれば、アプリコンテストのようなイベントを上手に使って成長していくようなケース等、様々な方法があるのかなと思っています。

 


 

(質問3)高齢者を含めた「誰もが使いやすいアプリ」として考えられているものがあれば教えてください。

〔野川氏〕

 今、高齢者の方々の中では、健康ポイントが大変人気のようです。高齢者は幼少期にラジオ体操等でスタンプをもらっていたからか、そういったものを集めるのが好きなのかもしれません。

 これは、アプリを利用し続けてもらうためのモチベーションの1つとして非常に有効ではないでしょうか。

 また、操作がシンプルで簡単であることも重要です。

 一方で、利用が広がるきっかけとしては、友人のお勧めや友人との共有、これを利用することが肝要です。

〔及川氏〕

 中国は今、ITの普及が驚異的に進んでおり、高齢の方でもスマートフォンのQRコード決済やアプリ等を使いこなしています。

 一方で日本のエンジニアは、ユーザーからサービスの使い勝手が悪い等、よく怒られることがあります。そうするとエンジニアは頑張って使いやすいものを提供しようとするのですが、それにも限度があると感じています。

 操作がシンプルで簡単なものが求められる一方で、利用者にも勉強していただく必要があると感じているのも本音です。

 野川先生のお話にあった『友人のお勧め・友人との共有』をうまく利用して、徐々にリテラシーを高めていけるよう、少々操作難易度の高いサービスを生み出すことで、利用者自身が模索しながら使ってもらうことを引き出すことができれば、日本のスマートフォンの利用率も上がるのではないか。そういったすごく良いヒントをいただいた気がします。

〔矢野氏〕

 (日本のアプリが海外のアプリよりも使いにくく感じるという及川氏のコメントを受けて)確かに、思い込みで作っているかな、と感じることがあります。もっと利用者とコミュニケーションを図り、しっかりとニーズを捉えるといった、『ユーザーと一緒に作る』という意識が必要なのかもしれません。

 


 

(質問4)区市町村によるオープンデータの取組をもっと強化してほしいと考えています。データ形式の統一化等、現在の自治体の取組に対するご意見をお願いします。

 

〔村上氏〕

 全自治体が一堂に会してオープンデータの公開形式の標準化を検討するのは正直困難です。

 そういうことを踏まえると、模範となる優れたアプリが出てきて、そのアプリが活用できるデータ形式で公開すれば、どの自治体でもオープンデータを活用してもらえるというように、『サービスに合わせてデータ形式の標準化が図られていく』のが、一番良い方法ではないかと思っています。

 また、内閣官房が開催するオープンデータ官民ラウンドテーブルのように、サービスを作る側とオープンデータを公開する側が一緒に話し合う場において、こうしたテーマを取り上げることも非常に効果的だと思います。

 そうした場合、都道府県の役割が非常に大きくなると思いますので、そういう意味でも東京都には旗振り役として頑張ってほしいです。

 それ以外では、公開する自治体側・職員の方にも、自分達が公開しているデータを実際に活用してみてほしいと思っています。

 数値分析や、政策立案への活用等、要は一度も使ったことがないデータを公開するだけで、その使い勝手の良し悪しを全く知らないというのは間違っているように思います。

 ぜひ、一度でも良いので、まずは使ってみてから公開するという意識で取り組んでみてください。そうでないと、なかなか開発者との溝は埋まらないのではないでしょうか。

〔及川氏〕

 私もそうですが、一般的に住民は住んでいる自治体の取組に対して、そこまで関心を持っていないことが多いです。そうした中で、自治体としてオープンデータを”ただ”公開するだけでは使われないと思います。

 オープンデータは活用されて初めてその価値を発揮します。この関心の低い人達に、もっとオープンデータを知ってもらい、活用してもらうためには、スタートアップ企業のように使われるまで執念を持ってオープンデータの公開方法を模索し続ける等、工夫が必要ではないでしょうか。

 自治体として、それができた時に初めて、本当の意味でオープンデータの活用が進むと思っています。

〔庄司氏〕

 ありがとうございます。確かに、自治体に興味を持っている人が少ないという現実はあるのかもしれません。

 しかし、現在、オープンデータに関心はないけれど、地元の特定の問題に対して関心を持っている方や、NPO、大学関係者等といった方々と自治体が一緒に課題解決に取り組んでいく中で、オープンデータの意義に気付き、その利用が進むこともあります。 ぜひ、試行錯誤を重ねて、取り組んでいってください。

 

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〔3〕表彰式(結果発表)

 

 知事賞  来場者特別賞  ※2部門受賞!

ruprun!

犬伏萌々子_海老澤大喜

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☆受賞者コメント☆

〔犬伏 様〕

 このような賞をいただけるとは夢にも思いませんでした。

 また、知事賞だけでなく、来場者特別賞と、多くの方からご指示をいただきありがとうございました。

〔海老澤 様〕

 会社や仕事とは関係なく、二人でコツコツ作りました。

 その努力がこうした形で実ったこと、本当にうれしく思います。

〔お二人から〕

 オープンデータは、官民がお互いに協調し合うことで発展していくものだと考えており、その発展に少しでも寄与できたら幸いです。

 ruprun!は、今後もアップデートを続け、より使いやすく、より多くのオープンデータを活用していく所存です。今後ともよろしくお願いします。

  ※来場者特別賞:当日の一般来場者の投票で、最も得票数が多い作品

 

 優秀賞 

Ariake Tennis VR 

唐鎌千里

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 入賞 

スポーツイベントカレンダー

株式会社ジョルテ

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 入賞 

しながわパパママ応援アプリ「こうえんしょうかい」  

立正大学経済学部 経済フィールドワーク1 外木クラス

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 入賞 

リンククロス アルク

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社

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 東京都知事 式辞・総評(東京都総務局長 代読) 

 最優秀賞である知事賞を受賞された犬伏様、海老澤様、本当におめでとうございます。 この受賞作品「ruprun!」は、ジョギングやウォーキングをするときに、距離であるとか、銭湯や美術館などに立ち寄りたいといった条件を入力すると、それに適したルートを瞬時に地図上に示してくれるというものです。 利用者が、今、この場所からウォーキングをしたいと思えば、すぐに気軽に始めることができて、楽しめる。スポーツの得意不得意にかかわらず、多くの方に運動するきっかけを与えてくれると思います。 今後、さらにオープンデータを取り込んでいくことで、利用者の希望や興味に応えて、街の見どころを巡るなど、バラエティに富んだルート提案をしてくれるのではないでしょうか。そういった、今後の発展可能性にも大いに期待し、知事賞とさせていただきました。

 また、優秀賞となった「Ariake Tennis VR」は、テニスを疑似体験できるアプリです。都のオープンデータである施設図面を活用して再現された有明コロシアムでプレイできるというものです。 オープンデータをVRに活用するというアイデアに富んだ作品だと思います。

 さらに、今回入賞となった3作品「しながわパパママ応援アプリ こうえんしょうかい」、「リンククロス アルク」、「スポーツイベントカレンダー」は、既にサービスとして広く展開されているアプリにオープンデータを活用した作品であり、効果的な活用方法の一端を示していただいたと思います。

 さて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会まで、500日を切り、488日となりました。ロンドン大会では、公共交通のオープンデータ、そして、それを活用したアプリやサービスが、レガシーとなったと聞いております。 都は、データという大変貴重な宝物を持っています。保有する公共データを、2020年度までに、4万件超、オープンデータ化してまいります。 このオープンデータを活用していただいて、民間の優れたアイデアと技術で、一人ひとりに使い勝手のいいアプリなどを競い合って作っていただきたい。 行政がデータを公開し、それを使って民間がアプリを作る。 このような「官民協働」で、ロンドン大会時を超えるレガシーを残してまいりましょう。

 皆様の今後のますますのご活躍を祈念しております。 本日は、誠にありがとうございました。

 平成31年3月24日 東京都知事 小池百合子

 

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 展示スペース 

 当日の会場内には、受賞作品の展示ブースや来場者特別賞の投票ブース、昨年開催した「東京都オープンデータアイデアソンキャラバン2018」の紹介ブースをご用意し、多くのご来場の皆様にお楽しみいただきました。

 

 作品展示ブース 

 

 来場者投票ブース 

 

 

 

 アイデアソンキャラバン2018紹介ブース 

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