第11回
東京都オープンデータ・ラウンドテーブル
議事録

東京都オープンデータ・ラウンドテーブル 議事録

令和8年3月3日(火)14時00分~15時37分
東京都庁第二本庁舎10階217会議室 オンライン併用
司会(株式会社ボーンレックスの植村):

定刻となりましたので、「第11回東京都オープンデータ・ラウンドテーブル」を開催いたします。本日の司会進行を務めます、株式会社ボーンレックスの植村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の次第でございます。始めに「東京都のオープンデータの取組」及び「デジタル庁の最近のトピック」について説明をさせていただきます。続いて、外部有識者による「講演」では、本日お招きしております学識者の方から、オープンデータの推進について独自の視点でご講演をいただきます。また、「提案者からのプレゼンテーション」では、提案者様からデータ利活用のご提案をいただき、その後当該提案に対する質疑応答やディスカッションを行います。

なお、学識者様のご講演資料、事業者様のご提案資料及び全体の議事は、後日、東京都オープンデータカタログサイトに掲載予定でございます。

それでは、本日の参加者をご紹介いたします。

ご講演いただく学識者、並びにコメンテーターとして、
・拓殖大学政経学部教授 河村 和徳(かわむら かずのり)様
にご出席いただいております。

ご提案者として、
・日本Tableauユーザー会CCO 永瀬 宗彦(ながせ むねひこ)様
にご出席いただいております。
なお、通知書類に記載しております、アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 AI・DX支援室 室長 ディレクター 石川 陽一(いしかわ よういち)様におかれましては、体調不良により本日ご欠席となっております。

オブザーバーとして、
・デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ データプロダクトマネージャー 丸田 之人(まるた ゆきと)様
・一般財団法人GovTech東京 テクノロジー本部 データ利活用グループ グループ長 畔上 健太(あぜがみ けんた)様
にご出席いただいております。

また、東京都からは、デジタルサービス局データ利活用担当部長の小林(こばやし)でございます。そしてデジタルサービス局デジタルサービス推進部データ利活用担当課長の大迫(おおさこ)でございます。そして、デジタルサービス局デジタル戦略部デジタル改革課長の奥村(おくむら)が出席してございます。

東京都各局職員及び区市町村職員の方々にも、オンラインでご参加いただいております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

発表者の方はご発言の際に、事務局からご案内いたします。発言の際以外は、画面操作を行わないようお願いいたします。また区市町村職員の皆様におかれましては、ご質問がございましたら原則Teamsのチャット機能よりご投稿をお願いいたします。

ご案内が長くなりましたが、開催に先立ちまして、デジタルサービス局データ利活用担当部長の小林より開会のご挨拶を申し上げます。小林部長、よろしくお願いいたします。

デジタルサービス局 小林部長:

本日はお忙しい中、オープンデータ・ラウンドテーブルにご出席・ご聴講いただきまして、誠にありがとうございます。東京都デジタルサービス局データ利活用担当部長の小林と申します。日頃より、都のオープンデータ化をはじめ各種DX施策にご協力いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、東京都では、2017年にオープンデータカタログサイトを開設以来、オープンデータ化の取組を進めておりますが、ニーズや課題の把握、機運の醸成を行うことを目的に、民間事業者や学識者の方などからご提案をいただき、行政職員と意見交換を行う場として、2021年より、「東京都オープンデータ・ラウンドテーブル」を開催しています。これまで、ラウンドテーブルでいただいたご要望などを踏まえ、例えば、駅のエレベーターの点検情報や、点群データ、浸水予想区域図等のデータを公開してまいりました。また、PDF形式で公開していたものを、データの機械判読性の高いCSV形式に変換する取組も積極的に行っています。

データに関してご紹介申し上げますと、東京都では、AIを都政のあらゆる側面で徹底的に利活用し、「都民サービスの質向上」や「業務の生産性向上」を図るため、AIと向き合う際の基本的な考え方や取組の方向性を示した「東京都AI戦略」を昨年7月に策定いたしました。
 このAI活用を支える基盤として重要な役割を果たすのがデータです。信頼性が高く、二次利用可能なデータが広く共有されることで、行政におけるAI活用の可能性は大きく広がり、また、民間企業や研究機関、スタートアップとのオープンイノベーションの促進にもつながります。行政が保有するデータを適切に整備・提供することが、多様な主体との連携を通じたAIの徹底活用にもつながるものと考えています。
 また、東京都では「東京都データマネジメント方針(仮称)」を現在取りまとめているところでございます。この方針では、「社会全体でデータの利活用を推進」、「品質を意識したデータの整備」、「データを扱う上での安全性・透明性の確保」の3つの観点から、データマネジメントを推進していくこととしております。都民や事業者の視点に立ったサービスを展開するためにも、データの標準化や制度の整備、全国的なデータ連携基盤の活用を、国や区市町村と連携・協力して進める必要があると考えております。

本日のラウンドテーブルが、オープンデータに関わる皆様にとって有意義なものとなりましたら幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

司会:

小林部長、ありがとうございました。
 続いて、東京都のオープンデータの取組について、データ利活用担当課長の大迫よりご説明いたします。大迫課長、よろしくお願いいたします。

デジタルサービス局 大迫課長:

東京都デジタルサービス局データ利活用担当課長の大迫です。オープンデータの取組状況について私からご説明いたします。

東京都では、区市町村などの行政機関や様々な関係者と連携して、オール東京でオープンデータの取組を進めています。資料右下、2021年2月に初の「東京都オープンデータ・ラウンドテーブル」を開催し、民間事業者や学識者などの方から、オープンデータの課題や幅広いニーズを聴取し、意見交換を行い、関係部署と調整のうえ、オープンデータ化につなげています。また、行政職員が実際にオープンデータ利用者と関われる場として、「東京都オープンデータコミュニティ」がございます。これらの2つでオープンデータのニーズを把握し、積極的なデータ公開を進めておりまして、資料左下「東京都オープンデータカタログサイト」では現在約80,000件の東京都及び区市町村のデータを掲載しております。そして、これらのオープンデータを活用して新たなサービスを生み出していく取組が「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」でございまして、デジタルサービス開発を競うイベントを行っております。このように各事業の成果を連鎖させ、循環させていくことで、オール東京でのオープンデータの取組をさらに促進していきたいと考えております。

重なる部分もございますが、具体の事業内容をご紹介させていただきます。
 まずは「東京都オープンデータ・ラウンドテーブル」でございます。民間事業者をはじめデータ利活用者の皆様からオープンデータへのご提案をいただき、我々行政職員とディスカッションしながら、新たなオープンデータの公開や改善を実現してまいりました。本事業は、保有データのオープンデータ化が、サービスなどの利活用事例の創出につながる有意義な取組であることを示し、今回各局や区市町村の皆様にも傍聴いただくことで、オープンデータ化に対する職員の意識改革も進めております。今回で第11回目の開催となります。
 次に、「東京都オープンデータコミュニティ」についてでございます。オープンデータ利用者同士のコミュニケーションや、利用者と都の繋がりを活性化させる事を目的として、2023年度に立ち上げました。どなたでも無料で参加ができ、現在会員数は750名を超えています。会社員、学識者、公務員、学生など、幅広い属性の方に参加いただいております。会員同士の情報共有や意見交換、又はサービス開発メンバーの募集といった「交流」、自らが行ったサービス開発など、オープンデータの利活用事例の「発信」、有識者による講演等の「イベント」への参加、オープンデータ利活用に関する問い合わせや、データ要望などを行える「質問・提案」を行えます。
 最後に、「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」についてです。東京都では、都や区市町村のオープンデータを活用し、行政課題の解決に向けたデジタルサービスの開発を競うイベント「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」を開催しております。応募者数も年々増加しており、5回目となる今年度は1,327名の方にご応募いただきました。
 せっかくですので、2025年度受賞作品をご紹介させていただきます。昨年10月のFinal Stageの結果、資料上部、夜間でも安全なルートを提案できる「YORUMICHI」が、都知事杯受賞の栄誉に輝きました。大学生2名のチームによる、警視庁の犯罪発生情報等のデータを利活用したサービスになります(資料2スライド5)。また、左下の行政課題解決賞では、千代田区福祉交通「風ぐるま」利用者の課題を解決するウェブアプリケーションが受賞しました。こちらは、施設などのオープンデータを活用した、千代田区福祉交通バスを簡単に検索できる乗換案内です(資料2スライド6)。ビジネス賞では、「よちヨチ」という献立表から窒息事故を予知するサービスも提案されています。調理師が料理をする際に献立提供方法の改善を行えるツールとなっています。サービスデザイン賞では、リアル災害サバイバルゲーム『渋谷歪譚』というサービスで、避難行動をリアルに体感し、備えの重要性を学ぶ新しい防災教育ツールのご提案などもございました(資料2スライド7)。本日ご紹介を割愛させていただきましたけれども、その他の都民に役立つサービスも様々ご提案いただきまして、ハッカソンの中で都が開発支援を行いながら、各チームによる社会実装まで行っているという取組になります。もし、これらのサービスについて、各局や自治体の皆様で、ご利用になりたいという場合は、東京都またはハッカソン事務局までご連絡いただければと思います。
 最後になりますが、先ほどご紹介いたしましたサービスは実装には至っておらず、まだデモ版というところになります。まさに現在、リリースに向けて開発を進めているという状況です。この成果発表会(Demo Day)を3月14日(土曜日)に開催いたします。オンライン配信もありますので、ご覧のQRコードからお申し込みいただき、ぜひご視聴ください。

こうした様々な取組を通じ、オープンデータの公開を一層進め、都政のQOLを継続的に向上させていきたいと思います。
 東京都のオープンデータの取組状況の報告は以上です。

司会:

大迫課長、ありがとうございました。
 続いて、デジタル庁の丸田様から、最近のデジタル庁のトピック、データ関連のお話を伺えればと思います。それでは、丸田様お願いいたします。

デジタル庁 丸田様:

只今ご紹介いただきました、デジタル庁でオープンデータの担当をしております丸田と申します。よろしくお願いいたします。本日は、デジタル庁というよりは、最近のオープンデータの状況をご紹介させていただければと思います。
 都や区市町村の職員の方々も最近はかなりAIを使う機会が増えてきたのではないかと思います。なかでも、オープンデータはかなりいろんなところでAIに使われているとされています。特にAIの学習に使われている他に、特定分野の知識を累積して正確な回答を行うAIというものでも、知識データとして自治体や民間企業の中で使われていることが多いです。また、為替情報や天気予報のようなリアルタイム性が高いオープンデータも、AIが直接参照することがあるようです。特に、自治体が公開する地域固有の嘘や誤りがほぼない(精度が高い)データ、また、スライドには書いておりませんが鮮度が高い(最新の)データの需要がますます増えている、というのが最近の状況になっております。

先ほどお話しした知識データですね、RAGという仕組みを使って知識データベースを作って、生成AIが回答する時により正しい回答をするためにオープンデータが多く使われています。
 少し前の状況だと、オープンデータではPDFファイルは良くないとされてきました。ただ、AIからすると、PowerPointファイルよりもPDFファイルの方が理解しやすいといったことも最近では言われております。なので、一概にPDFだとダメだという状況でもなくなってきています。とはいえ、アプリで利用されるという時にはやはりCSV形式がより良いというところもあるのは、これまでのとおりです。
 一方で、オープンデータではよいとされていたCSVファイルのデータも、生成AIではデータの中身についての説明(メタデータ)がないことで、AIにとって理解しにくい、または、誤って理解されてしまう、といったことも指摘されています。
 現状、日に日にAIの精度も上がってきておりますし、いろんなことができるようになってきておりますので、過渡期で、現時点で「これが正解!」という形は言えないのが今の状況です。ですが、職員の皆様方にはぜひ、鮮度(更新頻度)を高くすること、そしていろいろなデータを出していただく、特にAIが知らない地域独自のデータですね、それとメタデータ、どういうデータなのかって説明をつけて、二次利用可能な形でデータをどんどんオープンにしていっていただければと思っております。
 私からは以上です。

司会:

丸田様、ありがとうございました。引き続き、いろいろご意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは次第の4、有識者による「講演」に進んでまいります。拓殖大学政経学部教授 河村 和徳様、お願いいたします。

拓殖大学政経学部 河村教授:

拓殖大学政経学部教授の河村と申します。私はオープンデータの利用という話の中ではむしろ使って分析をする側の立場もありますが、今日はですね、まあそれだけではないものですから皆様にご紹介をさせていただければと思います。
 何をしている人かといいますと、私はどちらかというとサーヴェイデータやアグリゲートデータという形で、自治体の方で提供されているオープンデータなり、私が実際やった世論調査を分析・研究しています。研究者としての立場ですけれども、スライド右側(資料4スライド2)に「自治体DX推進とオープンデータの活用」と出していますが、研究としては、近年では自然言語処理、いわゆるLLMの活用も進めております。また、行政への貢献として、宮城県の行政経営推進に関わる取組において、中長期計画の目標設定などについて、非行政の立場から支援を行っております。さらに、市町村アカデミーにおいて、オープンデータ活用の基礎に関する講義も行っております。

最近の動向として、非言語情報の研究をしています。自治体の議事録や公文書を読み込んで、どのような形で意思決定がなされているのかを分析する研究も行っています。リステックスにおいては、SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラムに参画しております。現在は、地方自治体におけるトラスト形成をテーマに、オープンデータの活用に関する研究を進めています。具体的には、オープンデータを整備・公開し、それを単に分析するだけでなく、どのように活用すれば、次のアウトカムとして自治体への信頼向上につなげることができるのか、という点に焦点を当てています。すなわち、データを公開して終わり、あるいは分析して終わりではなく、その先にある成果として、オープンデータが自治体の信頼形成に寄与する仕組みを明らかにすることを目的としています。こうした観点についても、現在の研究の目標として取り組んでいます。
 その一環として、最近では宮城県の公文書管理に関する委員会の委員に就任しました。ご承知のとおり、公文書をどのように保存・管理していくかは、多くの自治体において重要な課題となっています。先ほど申し上げたように、近年では自然言語処理の技術を活用し、テキストデータを政策立案に活かしていく動きが進んでいます。そのため、これらのデータをどのように適切に保存していくかが重要な論点となります。私自身は宮城県に関わりがあり、また東北大学大学院情報科学研究科に在籍していた経緯もありますが、宮城県では東日本大震災から15年が経過しています。公文書法(公文書等の管理に関する法律 )に基づく歴史公文書への移行は20年が一つの基準とされていますが(自治体によっては30年保存としているケースも見られます)、こうした中で保存期間を迎えた文書について、これまで蓄積されてきた紙媒体及びデジタルデータを公文書館にどう移すのか、また今後どのようにデジタルで保存していくのかといった点について、検討が求められています。そのため、委員として議論に参画し、現在検討を開始したところです。なお、本取組は今年度から開始されたものであり、まさに議論を進めている段階にあります。また、時間の関係もあり詳細は割愛しますが、市町村アカデミーにおいては、こうした内容を踏まえつつ、自治体職員の方々がオープンデータを活用して政策評価・政策立案する場合の講義も行っています。

政策立案に関しては、まず基本的な考え方としてどのような取組を行うのかを説明していますが、その際に必ず強調しているのが、オープンデータの作成段階における指標、インデックスをどう設定するかというトレーニングを適切に行うことの重要性について、常に注意喚起を行っています。例えば、東京都においても、2020年オリンピックに関連する調査データがオープンデータとして公開されていますが、しばしば見られるのは、世論調査の集計結果のみが公開されているケースです。しかし、より高度な分析を行う観点からは、個票データの公開をしてほしい場合もあります。このように、分析ニーズと公開されているデータとの間に乖離が生じることがあります。また、既に設定された指標に基づくデータのみが公開されている場合、その指標を使って分析せざるを得ず、その指標をどう作っているかというフィロソフィーにより、結果としてオープンデータの活用が変わってきてしまう。このため、自治体はデータを提供する立場として、「どのような指標で、どのような目的のもとにデータを公開するのか」という点を明確にすることが重要となります。
 一方で、分析手法や先端技術の活用をイメージしがちですが、オープンデータの基本中の基本は、どのデータを公開し、それをどのような分析につなげるのかという設計にあります。この点について、より一層の理解促進が求められます。現状においても、公開されているデータの質のみで分析を行える人いますが、そのような状況が進むと、シビックテックの技術を有する一部の人材のみが(オープンになっているデータを)評価するが、そこが分からない一般の方が付いていけなくなるという課題も生じます。このような分断を生まないための取組も、今後重要となる論点です。さらに、国によってシビックテックの発展状況には差があり、積極的に推進している国もあれば、日本のように行政への信頼を基盤とし、提供されたデータをもとに分析して利活用を進める傾向が強い国もあります。これらは良し悪しの問題ではなく、それぞれの特性を踏まえた上で、行政と民間が情報共有を行いながら進めていくプロセスが重要です。本日のようなラウンドテーブルの場は、こうした相互理解を深め、次の取組につなげる契機になると考えています。

また、文書データの活用という観点では、近年の大規模言語モデル(LLM)の発展に伴い、公文書のオープンデータ化とその利活用に関する研究も進展しています。例えば、米国ではキューバ危機に関する公文書を用いた研究が進められており、機械学習により当時の意思決定過程をシミュレーションし、実際の行動との比較分析が行われています。その結果、両者の間に一定の差異が確認されており、その要因を解明する研究が進められています。国内の事例としては、大阪府議会の議事録データを分析することで、特定の政策キーワードの変遷を把握することが可能です。例えば「議会デジタル」というキーワードについては、当初は特定の政党による発言に限られていたものが、次第に他の政党にも広がり、さらに政策の進展に伴い言及が減少するなど、政策過程の変化を読み取ることができます。
 このように、政策がいつ頃から議論され、いつ終息したのかといったプロセスについても、LLM等の技術を活用することで把握することが可能となります。オープンデータは、現在の人々に対して分析可能なデータを提供するだけでなく、将来において、子どもや孫の世代が過去を振り返る際の重要な基盤ともなり得るものです。その意味においても、データを適切に残し、伝えていくことの重要性を強調しておきたいと考えます。

オープンデータについては多くの議論がなされているところですが、特に「行政の高度化・効率化」という観点については、今後さらに踏み込んだ取組が必要であると考えられます。加えて、先に述べたように、より精緻な記録としての役割も有している点を踏まえ、この両面からの検討が求められます。一方で、オープンデータの活用状況を可視化することは容易ではなく、アプリ開発やハッカソン等の取組が行われているものの、実際に宮城県においても支援の依頼を受けた経験がありますが、やはり可視化は難しいと感じています。
 こうした状況を踏まえ、最後に韓国における最近の取組を紹介します。福島学院大学の高 選圭(コ・ソンギュ)教授からの情報によれば、韓国では都道府県に相当する自治体レベルにおいて、LLMを活用した政策支援の取組が進められています。具体的には、条例の制定・改正に関する支援システムのより自動化が検討されており、いわゆる「AI秘書」として、議員の政策立案を支援する仕組みの導入が進められています。日本や韓国では、議員の人的支援体制が限定的であるため、政策立案能力の向上が課題となっていますが、こうした技術の活用により、その補完が期待されています。例えば、先進事例の検索や条例案の作成支援、さらには内容の添削などを行う仕組みが検討されており、加えて、予算・決算の分析支援といった領域への展開も進められています。これらは、既存のオープンデータを活用することで一定程度実現可能な取組です。

さらに、済州島では、陳情解決支援システムや観光政策の立案支援において、交通データや気象データ等のオープンデータを組み合わせたシミュレーションの活用が進められています。これらは個別のアプリとして展開されるのではなく、既存システムを統合し、議会における政策形成能力の向上につなげる形で運用されています。本フォーラムは民間主体の取組が中心ではありますが、こうした知見を議会や行政へフィードバックし、政策形成に活かしていく仕組みが構築されることが望まれます。

一方で、韓国においても、こうした取組は都道府県レベルの自治体が主導しており、小規模自治体においては人材やリソースの制約から、オープンデータの整備自体が困難なケースも多く見られます。実際に地方で講演を行った際にも、「東京都のような大規模自治体だからこそ可能である」といった声が聞かれます。そのため、東京都のような自治体が先進的な取組を率先して公開し、具体的な活用事例を示していくことは、日本全体の政策形成水準や条例制定能力の向上にも資するものと考えられます。
 以上を踏まえ、今後の取組についてご検討いただければ幸いです。説明を終わります。ありがとうございました。

司会:

河村教授、ありがとうございました。
 それでは、引き続き意見交換の時間とさせていただきます。各局職員及び区市町村職員の皆様におかれましては、ご質問やご意見がある場合、Teamsのチャット機能にてご自身のお名前とご所属を明記の上、ご投稿をお願いいたします。
 まず、会場からご質問・ご意見等を頂戴できればと思います。デジタルサービス局の大迫課長、ご意見を伺ってもよろしいでしょうか。

デジタルサービス局 大迫課長:

ありがとうございました。私たちはオープンデータの意義の中でも、どちらかというと諸課題の解決や経済活性化といった視点から、ハッカソンの実施、利活用の促進、データ整備の推進の好循環を進めてきました。本日のお話はEBPMや高度化・効率化といった観点で、私たちからすると、これまで全く考えていなかったわけではありませんが、視点として薄かった部分があったと感じながら聞かせていただきました。オープンデータ基本指針で示しているように、すべてのデータをオープンデータとして公開できれば、そのような活用にもつながるかと存じます。
 その中で、2点ほどお伺いしたいことがあります。まず、先日、副知事の出席する別の会議の場でも話題に上がったのですが、オープンデータ整備にどこまで予算をかけるべきか、という点です。本日のお話を聞きながら、改めてその点を考えました。民間であれば、ビジネスでデータを売り、そこに予算をかけて、そこで利益を得る、だからデータを整備することに価値がある、と企業が感じられるということがあります。一方で、オープンデータの整備が何につながっているのか、いわゆるアウトカムの部分が見えにくいという課題があります。例えば、政策や議会で活かされるなど上手く循環が生まれれば、オープンデータの整備に予算をかける価値も見えやすくなると思いますが、現状ではそこまで十分につながっていないと感じています。また、オープンデータを推進するにあたって、各局にてデータ整備を進める必要があるものの人員も限られており、さらに、加工されていないデータの公開は組織としても意思決定が難しく、集計済みデータ(公開可能な状態)が公開されるケースが多くなっています。そのため、オープンデータを整備する行政にとっての価値や、どの程度まで予算をかけるべきかについて、もし知見や思うところがございましたら、教えていただきたく存じます。

拓殖大学政経学部 河村教授:

はい、ありがとうございます。実はこの点については、昨日も同様のご質問をいただきました。ただ、我々の世界からすると、執行部、議会、民間の三者それぞれで、基本的な考え方が異なっているため、この点を理解してオープンデータを考える必要があります。先ほどもご指摘があったように、民間はやはり商売や自社の利益につながるデータを求める傾向があります。一方で、データを提供する側としての行政は効率性を重視します。行政は税金で運営されているため、どこかでコストを抑制しなければならず、過剰な負担は避ける必要があります。しかし、議会については少し性質が異なり、効率化を志向しつつも、民主主義の仕組み上、ある程度の「非効率」や無駄が許容される組織でもあります。そのため、行政とは異なる観点が入り得ます。
 こうした中で一つの考え方としては、まず民間の立場から「必要とされているデータ」を把握することが重要です。その上で、議会の側から「必ずしも効率的ではないが、記録として残すべきデータ」についての要望を整理する必要があります。すなわち、民間のニーズと議会のニーズは必ずしも一致せず、それぞれ異なる観点を持っているということです。行政としては効率的に対応する必要がありますが、どこまで対応すべきかの判断は難しいため、議会からの要望を一つの基準とすることが考えられます。例えば、過去の議事録を分析することで、どのようなデータが必要とされてきたのかを一定程度仕分けをすることが可能です。
 したがって、「都庁対民間」という構図ではなく、どちらかというと都庁内部に二つの存在があって、ある程度の非効率を許容しつつも、民主主義の仕組みの中から必要だとされるものが入っている。そこを聞いてみるというのはありだと思います。韓国の事例では、議会費を活用してデータ整備を進めているケースもあります。つまりは、議会と民間の双方から必要とされるデータは特に重要であると考えられます。一方で、議会のみが必要とするデータや、民間のみが必要とするデータも存在するため、それらを整理し、データ整備に関する計画や方針を策定していくことが望ましいと考えます。そして、東京都においてこうした整理が進めば、一つのモデルやマニュアルとして全国に展開可能であり、日本の自治体全体にとっても有益な取組となると考えられます。単にすべてのデータを公開すればよいというものではなく、各自治体でも実行可能な形で整理していくことが重要です。東京都のような大規模自治体のみが実現できる取組になってしまうと、全国的な波及効果は限定的となるためです。
 そのため、他の自治体でも活用可能な形で整理・提示していくことが重要であると考えます。先ほどご紹介のあったデータマネジメント方針についても、例えば検討の場に議会の代表を含める、あるいは民間も含めた形で研究会や審議会のような枠組みを設けることで、より実効性の高い方針策定が可能になると考えます。見直しの際にも、こうした枠組みを活用することで、より進めやすくなるのではないかと思います。以上です。

デジタルサービス局 大迫課長:

ありがとうございます。2点目です。こちらは紹介になります。先日、東京都において、1月に「データでわかる東京」をリリースしましたので、せっかくですのでご紹介させていただければと思います。本取組は、データを活用しながら、政策の取組状況や成果について、ロジックモデルを用いて可視化するものとして開始したものです。まだ始まったばかりではありますが、政策目標やそれに対する進捗を、視覚化されたデータとしてわかりやすく分析・発信していく取組となっています。「データでわかる東京」で検索いただくとご覧いただけますので、ぜひご確認いただければと思います。このような取組を通じて、政策の質向上などにつなげていけるよう、着実に進めてまいりたいと考えています。

拓殖大学政経学部 河村教授:

2点目について、少し個人的な意見になりますが、「データでわかる東京」と議員の質問を紐付けることができると、都民にとって非常に分かりやすくなるのではないかと思います。例えば、「この議員がこのような質問を行い、それに対してこのような答弁があり、その結果こうなった」という一連の流れが見えるようになります。そうすることで、単なる数値データだけではなく、先ほど申し上げた公文書データとどのように結びついているのかが理解できるようになります。
 つまり、データを単に公開するだけでなく、データ同士の関係性やリンクが分かる形で提供することが重要になると考えます。実際に、現在我々が取り組んでいる研究も、まさにその点に関するものです。例えば、都道府県レベルで一定期間の議会議事録を収集・分析したところ、「オリンピック」というキーワードについては、開催地だけでなく他の地域でも言及が増加するものの、その時期にはずれがあるといった傾向が確認されました。このように分析していくと、東京都の様々な取組の中には、議会からの質問を契機として実施されたものもあれば、執行部主導で進められたものもあることが分かります。こうした関係性は、単なる政策評価に留まらず、二元代表制をより適切に機能させるためのオープンデータ活用につながります。もっとも、こうした取組は始まったばかりであり、今後20年、30年といった長期的な視点で、公文書改革の一環として実現されていくべきものだと考えています。最終的には、それが議会や執行部、さらには各局に対する信頼につながっていくことが重要であると考えます。
 以上です。ありがとうございました。

司会:

大迫課長、ありがとうございました。
 続きまして、次第の5、提案者からのプレゼンテーションに進んでまいります。日本Tableauユーザー会CCO永瀬宗彦様、よろしくお願いいたします。

日本Tableauユーザー会CCO 永瀬様:

はい、ありがとうございます。それでは、私の方から「データ活用における課題とアプローチ」ということでお話しさせていただきます。
 ここで、皆さんにも少し質問させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。皆さんのお住まいの地域を教えてください。会場の皆さんは挙手で、Teamsで入っている方もリアクションボタンを押していただければと思います。また、地名を出しても良い方は、チャット欄にご自身の住んでいる地名を入れてください。
まず、東京23区にお住まいの方。
はい、ありがとうございます。
多摩地区の方。
ありがとうございます。
島しょ部の方はいらっしゃいますか。
ありがとうございます。
では、その他の方。
はい、ありがとうございます。
ということで、それを前提に話を進めます。内容自体はあまり変わりませんが、東京の方が多い一方で、それ以外の地域の方もいらっしゃるということですね。

アジェンダはこちらになっておりまして、まず「データ活用一般」について、なぜ難しいのかという点を、私の経験を踏まえて解説します。そのうえで、それを深掘りした構造問題を少しお伝えします。さらに、「課題起点のアプローチ」がその構造問題に効くのではないかと考えていますのでそちらをお話しし、最後に私からの提案として「アンケートデータのオープン化」についてご説明します。

先に提案の方から申し上げますと、「利用者の声などのデータのオープン化」を、去年のヒアリングの段階で提案させていただきました。どういった質問で、どういった回答をしたかというと、「東京都に何のデータをオープンデータ化してほしいか」という問いに対して、私の回答は「行政サービスに対する利用者の声などのアンケートデータがあればお願いしたいです」というものでした。それが何の役に立つのかという点については、「行政施策とニーズとのマッチ・アンマッチを計測するため」と回答しました。今日これから、そのように回答した理由を説明し、最後にもう一度この点を振り返りたいと思います。

まず、「データ活用はなぜ難しいのか」というところですが、これはボストンコンサルティンググループの、AIも含めたデータ活用成熟度に関する2024年度版の調査です。左側(資料5スライド5)の95%というのは、「データ活用を進めている組織」です。N数は1,999組織ですが、95%が活用を進めている一方で、成熟段階にあり組織横断で運用データやAIなどを活用できている組織は8%に留まっています。かなり少ない、という印象を持たれるのではないでしょうか。

もう少し深掘りしてみると、右側(資料5スライド6)の緑の棒グラフにスコアが書いてありますが、これは成熟度スコアで数値が高ければ高いほど成熟している、ということのようです。ただ、残念ながら、これはアメリカの企業等の調査ですが、パブリックセクターは一番低い位置にあります。おそらく日本でも同じような結果になるのではないかと思います。

では、この成熟度スコアはどうやって評価しているのかというと、5つの軸で評価しているようです。このABCDE(資料5スライド7)ですが、企業内で長くデータ活用に関わってきた人間としては、非常に妥当な指標だと思います。まず、戦略・ビジョンが策定されていること。次に、組織・プロセスが整っていること。さらに、技術・インフラ、つまりデータ基盤などが整っていること。加えて、人材・スキル、教育が回っていること。そして最後に、運用成果、つまりデータ活用が実際の運用にきちんと乗っているかどうかです。この5つで評価しているのですが、上に書いてある通り、必要な要素が5つあるだけでもかなり多いですし、一つひとつが重いです。しかも、これらは同時並行的に揃っていないとうまく機能しません。そう考えると、データ活用というのは、かなり「無理ゲー」なところがある、というのが私の意見です。

では、どういうところに難しさがあるのか、もう少し細かく見ていくと、構造問題があると思っておりまして、4つほどご紹介します。

まず、データ活用の構造ですが、右側の図(資料5スライド9)はデータサイエンス協会が示しているデータ分析のプロセスです。かなりいろいろなことをやらないとゴールにたどり着きません。課題設定から始まり、データ整備を行い、最終的なアウトプットに至るまで、どの工程も大変です。ですので、データ活用というのは、基本的にゴールが遠いのです。そもそも、その遠いゴールに何があるのか、実はゴールそのものが不明確な場合も結構あります。これに対する解決策としては、近くのゴールを探すこと、スコープを絞ること、小さく設定してまず結果を出すこと、というのが一般的に言えると思います。

構造問題の2つ目です。先ほどのプロセスとも重なるのですが、スーパーマンが必要です。求められるスキルが非常に幅広いのです。右側の表(資料5スライド10)は、必要なスキルの一覧です。しかも、これはかなり要約したものです。さらに細かいスキル・項目が並んでいて、これを全部揃えないとできないのかと思うと、かなり厳しいです。コードのスキルを持っている人も限られますし、それを全課題に配置するのも不可能です。解決策としては、課題をレベル分けし、人のスキルをマッピングして、マッチングをかけることになるのですが、言うのは簡単でも、実際にはかなり大変です。

構造問題の3つ目です。組織の階層と事業所間の距離があります。まず左側(資料5スライド11)ですが、階層でボトルネックが発生します。トップ層では、方針が打ち出せているかどうか、その方針が人事評価と連動しているかどうかが問われます。ミドルマネージャー層では、データ活用やAI活用に前向きな人がいるか、その人のもとに使えるデジタル人材がいるかが重要になります。現場層では、基本的にルーチン業務が中心なので、そこに時間を割けていられないという問題があります。こうして層として見ていくと、それぞれに課題が出てきます。

右側ですが、本部と各事業所との距離も遠いです。東京都でいうと、本庁と各事業所の関係に近いかもしれません。本部は新しいシステムや概念、文化を進めようとしますが、現場との意思疎通が難しいです。一方、事業所側はオペレーション重視です。人的リソースも足りず、データ分析のところまでたどり着けない、というのがほとんどです。こういった構造問題があります。

まとめると、そもそもゴールが不明確、あるいは遠いゴールを目指しすぎてしまうこと、スーパーマンが求められること、さらに組織構造上の問題がある、ということです。

ここからは、「課題起点アプローチ」ということで、3つほどご紹介します。

まず、ゴールが遠いという問題がありましたので、これを改めて問い直す必要があります。最近、私もよく言うのですが、「まず課題から始めましょう」ということで、まず喫緊の課題は何でしょうか。皆さんご理解していますか?ということです。また、「データから始めない」ということ。データありきで始めてしまうと、「データがないからできない」という話になりがちなので、データがなければ作ってしまう、最初から作る、という発想でいかないと、データに引きずられた設計になってしまいます。
 次に、「モチベーション重視」とありますが、たくさんある課題や問いはどこから手をつけるのかという問題があります。「データがあるからそこから手をつけましょう」というのは、結構悪手です。そうではなく、現場が解決を渇望している課題、そこから始めるのが良いです。なぜかというと、現場の人が手を動かしてくれるからです。現場の人が味方になってくれるため、「モチベーションを重視しましょう」というのはそういうことです。

課題抽出とゴールの明確化に対するアプローチとしては、3つあります。ヒアリング、アンケート、相談窓口です。ヒアリングは、丁寧で聞きたい情報が手に入りますが、時間と手間がかかります。アンケートは広く意見を聴取できますが、設計次第では的外れな回答が集まることもあり、結構難しいです。一番下の相談窓口は、個人的には結構おすすめしています。具体的な窓口を常設するというより、相談の場のようなものを定期的に開いて、そこに答えを出せる人を置いておく。そこでいろいろな話を聞き、情報収集をする、というイメージです。基本的には、これらを合わせ技でやるべきだと思っています。こういった形で課題を抽出していく方法があります。

課題を抽出したら、次に「データ活用のレベル分け」をしましょう。データ活用にもいろいろな段階があります(資料5スライド16)。システム化されたものであれば、Aの「照会」、帳票を見るだけでもデータ活用だと思っています。そこから始まって、Bの「レポーティング」、レポートのデータをダウンロードして、Excelなどで加工する。さらに進むとC「見える化」です。BIツールなどで見える化し、自動的に更新していくような仕組みです。その下のD「データ分析」以下になると、一気に難しくなります。なかなか手に負えなくなってくるので、成果が出やすいBやCあたりを狙うのが良いのではないかと思います。

このようにレベル分けをしたうえで、そこにどういったスキルの人を当てていくのかを考えるのが、正攻法になると思います(資料5スライド17)。

最後に、「議論が続く設計」です。「定期会議で毎回使用する」というのは話が飛んでいるように見えますが、単発でデータを可視化したり分析したりしても、単発で終わってしまうことが多いです。そうではなく、ある会議体があるのであれば、そこに出すグラフを、例えばBIツールなどで自動的に生成できるようにしておいて、その都度、意思決定に紐づけることが重要です。それによって、継続的にデータがブラッシュアップされていく状態をつくることができます。
 「課題に対していかに早く答えを出すかで採否が決まる」という点は少し分かりにくいかもしれませんが、データ基盤の話にも通じるのですが、皆さんも年間でやることはある程度決まっていると思います。何年か勤めていれば、「この時期にこの課題が出る」というのは分かっているはずです。そこに対して有効な手段が講じられていればよいのですが、そうでなければ、「来年また同じ課題が出るから、その時に対策を打てるように今から準備しておこう」という発想が必要です。
 そして、実際にその課題がまた出てきたときに、「このグラフがあります」「このソリューションがあります」という状態にしておく。そうすることで、そのデータが採用されるということになります。

課題起点アプローチのまとめとしては、データからではなく、課題から始めましょう、ということです。モチベーションのあるところから始める。課題をレベル分けして、スキルとマッチさせる。小さく成功させる。そして、会議や意思決定で使われるようにする。これによって、データ活用はより駆動していくのではないかと思っています。今回のオープンデータ・ラウンドテーブルとどう関係するのかというと、基本的にはこの構造はオープンデータにも当てはまるのではないかと思っています。公開はされているけれど、十分に活用されているという実感はあるでしょうか。

もちろん、十分活用されているという実感があればそれでよいのですが、もし「なかなか使い切れていない」と感じるのであれば、課題とデータとの接続をつくってあげることが重要だと思います。また、何がゴールなのか分からない状況も結構あるのではないかと思っています。そこを解決するためにも、課題と一緒にデータを公開する、ということが意味のある活用の後押しにつながるのではないか、ということです。

最後に提案に戻りますが、利用者の声などのデータのオープン化がよいのではないかと思っています。なぜかというと、「東京都に何のデータをオープンデータ化してほしいか」という問いを見たときに、「これはゴールが決まっていないな」と感じたからです。ゴールが決まっていないから、こういう問い方になっているのだろうと思いました。であれば、先にゴールを決めてしまいましょう、というのが私の提案です。そのゴールは、利用者の声を聞くことでも良いですし、それをもとに、例えばカスタマーサティスファクションを上げることでも、何かしらのトラブル解決でも良いと思います。何を目的にしてやるのか、そのゴールを明確にしたうえでデータを整備・公開していくと、より実感のある取組になるのではないかと思っています。以上が私からの提案でした。ご清聴ありがとうございました。

司会:

永瀬様、ありがとうございました。
 それでは、意見交換の時間に移りたいと思います。オンラインでご参加の各局職員及び区市町村職員の皆様におかれましては、ご質問やご意見のある方は、チャット機能にてご自身のお名前とご所属を明記の上、ご投稿をお願いいたします。
 では、会場の皆様からもぜひご意見をいただければと思います。初めに、河村教授からコメントをお願いしてもよろしいでしょうか。

拓殖大学政経学部 河村教授:

はい、ありがとうございました。非常に勉強になる内容で、我々からすると、なかなか言語化できていない部分を丁寧に言語化されていると感じました。私も世論調査を行う立場として感じるのですが、世論調査というのは、ある程度、調査する側の意向を反映した形で回答をいただいている側面があると思います。先ほども出ていたアンケートの個票データについて、私自身も欲しいと申し上げましたが、それぞれの方々がどのように考えているのかという点には、やはり需要があると感じています。その意味で、ご提案は非常に的確であると考えます。
 一方で、少し考えておく必要がある点として、先ほどの「課題からスタートする」というアプローチについてです。今日参加されている方は行政の方が多いと思いますが、行政には歴史的にデータを残していかなければいけないという責務があります。そのため、課題起点で考えるオープンデータと、必ず保存していかなければならないオープンデータを整理する必要があります。すなわち、歴史的に残すべきデータと、政策的な課題を克服するために必要なデータを分けて考えることが重要です。先ほどのご提案は、課題をより細かく捉えていくという点で非常に有効だと思いますが、一方で、例えば人口データのように、当たり前だと思っているデータを残していかなければいけない。このあたりの整理が必要であると考えます。
 また、個人的な意見としては、もう少しブラッシュアップする観点として、「小さな成功の可視化」が重要だと思います。特に、自治体においては、小さな成功を可視化しないと、取組自体の推進力につながりにくいという課題があります。その際、課題を小さく設定して確実に実施することは重要ですが、それに加えて「ナラティブ(物語)」の視点も重要です。例えば、東京オリンピックの誘致の際に「復興五輪」というキーワードが使われましたが、宮城県では必ずしも評価が高かったわけではありません。しかし、この「復興五輪」というナラティブ自体は、国際的には非常に機能していました。このように、小さな成功をどう出すかという点も課題になります。
 オープンデータの取組についても、象徴的な評価や活用策を意図的に使っていかないと、大きな政策を進めていくうえでの種まきにならないと思います。したがって、ご提案のような基礎的な取組を進めつつ、幹部層や政治家の立場からすると、結果が見えやすく、住民にも説明しやすいナラティブのあるオープンデータ推進の取組として展開していく、その二兎を追うことも重要ではないかと考えます。以上です。ありがとうございました。

司会:

河村教授、ありがとうございました。それでは続きまして、デジタルサービス局奥村課長、よろしくお願いします。

デジタルサービス局 奥村課長:

ご提案いただきありがとうございます。職員の立場からすると、提供したデータが実際にサービスの創出につながっているのか等、そういった実感の部分が非常に重要だと感じています。先ほどもお話がありましたが、サービスやアプリを創出する側と、データを提供する側との間にミスマッチが生じないようにしていくことが重要だと思います。また、先ほどのデータ活用のレベル分けのお話についても、ミッションが明確になるので、このような取組は有効だと感じました。以上です。

司会:

奥村課長、ありがとうございました。それでは会場の皆様にもご意見伺えればと思いますが、畔上様からもコメントを頂戴できますでしょうか。

GovTech東京 畔上様:

ご講演、ありがとうございました。非常に面白く、大変勉強になる話でした。GovTech東京は東京都の技術組織で、その中で私のチームではダッシュボードによる行政データの可視化やデータ基盤の構築などを担当しております。本日話題にあがりましたロジックモデルについてですが、ロジックモデルのアウトカムの「評価」自体は、様々な立場があり多様な意見があると思います。そのため、インプット・アウトプットの「施策の実績・成果」のところは、出来る限りわかりやすく情報発信したいと思って取り組んでいますが、今後どのような観点でそのアウトカム(評価)を示すのかついては、今後もご意見いただきながら参考にさせていただきたいしと思っております。
 また、オープンデータの整備についても担当しています。これまで「公開するのであればCSV形式が望ましい」という考え方が基本だったと思いますが、今後はLLMでの活用を見据えたデータ整備も重要になると考えています。その場合、ダッシュボードでの見せ方や、CSVとしての扱いやすさとは異なる観点が必要になってくると思います。例えば、項目の意味付けなどはその辺を鑑みて、設計の仕方を見直していく必要があると感じています。こうした点については、戦略やデータマネジメント方針とも関係しており、組織・人材・プロセスといった要素を含めて、GovTech東京と東京都で連携しながら検討を進めていく必要があると考えています。以上です。

司会:

畔上様、ありがとうございました。それでは、こちらの提案に対する東京都の回答として、大迫課長よりお願いいたします。

デジタルサービス局 大迫課長:

本日、ラウンドテーブルということで、データのニーズをいただく会ですので、永瀬さんからいただきました、「行政サービスに対する利用者の声等のアンケートデータ」の公開について、ご回答させていただきます。
 まさにそうしたアンケートデータ、どちらかというと個票も含めてということでしょうか、有効であるとのご提案をいただきました。こちらにつきまして、東京都オープンデータカタログサイトにおいても、東京都が実施した様々なアンケートの結果を公開しております。今回ご提案いただいたことを踏まえ、今後も各局や区市町村に対してアンケート結果の公開を一層推進してまいりたいと考えております。継続的に出してほしいというお話もあったので、アンケートも持続的にとっているものがあれば、それがコンスタントに出されるというのも良いでしょうし、コンスタント性だけではなく、そこに至る経過まで出せるといい、という話もいただきましたので、そうしたことを推進してまいりたいと思います。
 また、カタログサイトの検索キーワードに今、「全文検索機能」というのが入っていまして、CSVデータの深くまで調べられるようになり、検索しやすくなりました。せっかくなのでご紹介させていただきます。検査キーワードに「アンケート」「意識調査」というものを入れていただくと、引っかかりやすいと思います。そして回答データをご覧いただきやすいと思いますので、ぜひ様々な用途にご活用いただけるよう、都から推進してまいります。回答は以上になります。

司会:

大迫課長、ありがとうございました。

それでは続きまして、アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 AI・DX支援室 室長 ディレクター 石川陽一様より、サイバー防犯のデータ利活用についてご提案をいただく次第でしたが、やむなく本日ご欠席となっております。我々事務局より簡単にですが、ご提案のご紹介をさせていただければと思います。

オープンデータの利活用における現状の壁として、機械判読困難な「和暦」や「半期」、マトリックス形式、そして分析には少し荒すぎる罪種区分に着目をされています。具体的には、資料4スライド目左側に見えております「R5上」や資料全体のマトリックス形式、罪種につきましては、例えば犯罪の内訳が詐欺188件などというような大きなくくりで(詐欺にも様々な種類があるが、そこまで記載がない)、中身が分析には少し不足をしているのではないか、という着目点のご指摘でございました。
 そこで、1つ目のご提案として、「BIツール等で扱いやすいデータ形式への改善」を挙げられています。ETLの前処理で加工する手間を減らすことで、使用者が即座に分析アプリ開発に着手できることが望ましいとのことでございます。クレンジングやデータ整形といった事前処理の手間をなくした方が良い、すぐに利用できる形で、というようなご提案が1つです。また、2つ目のご提案として、「急増するSNS型投資詐欺に即した詳細項目の追加」が挙げられています。例えば、インスタグラムの投資家広告に注意といったような、具体的なメッセージを市民に届けることが可能になり、公解像度の分析や勉強会での情勢周知が実現できるということでございます。以上が石川様のご提案になります。

こちらのご提案に対するデータの取り扱いについては、警視庁から回答をいただいておりますので、東京都よりお知らせいたします。大迫課長、お願いいたします。

デジタルサービス局 大迫課長:

こちら、警視庁からいただいた回答について、私からご報告させていただきます。この度ご提案いただいたSNS型特殊詐欺の詳細データにつきましては、準備が整い次第、オープンデータとして公開したいと考えております。また、石川様もアプリ等のいろいろなコンテンツを作られているところでしたが、こうしたコンテンツになるのは防犯対策のために本当に役立てていただいていると感じております、とのお言葉もいただいております。回答は以上です。
 警視庁におかれましては、引き続きデータ公開へのご協力をよろしくお願いいたします。以上です。

司会:

大迫課長、ありがとうございました。

それでは、次第の6「総括」に移りたいと思います。本日の会議を通じて、オープンデータに対する期待や課題、またオープンデータ利活用促進などにつきまして、登壇者及びオブザーバーの皆様からご意見を伺いたいと思います。
 それでは河村教授、いかがでしょうか。

拓殖大学政経学部 河村教授:

今日はお招きいただきありがとうございました。私としても、逆に未来はたくさんありますが、たくさんありすぎてどう手を着けていこうかという話もあると思います。おそらく、今のデータを出すことにいっぱいいっぱいだと思いますけれども、行政の継続性ですね、もちろん過去の、要するに出てきたデータを分析した結果の妥当性を検討するには、過去に遡っていかなきゃいけなくなります。そういうふうに考えていくと、今あるデータを提供するだけではなく、どうやったら過去を遡れるかっていうところがやっぱりこれから課題になってくるだろうし、人工知能学会とかの研究だと、先ほど出た表のデータをいかにオープンデータに変えていけるのかっていう研究もなされています。PDFでも紙でも、かつ映像や画像でもオープンデータに変えていく技術も盛んに研究されていますので、残された過去のデータをどういう形で分析に今使えるようにしていくのかところも今日お話しして課題かなというふうに思います。
 ただ、ハッカソンもそうですがいろいろな形で民間の力を使って、行政がレベルアップをしていかなければなりません。出す側というだけではなくて、様々な視点で頑張っているということは非常に評価できると思いますし、やっていかないといけないことです。さらにですね、先ほども言いましたとおり、やはり東京都に頑張っていただかないと、なかなか地方の県や市町村のレベルで頑張ろうといっても、じゃあどうすればいいんだろうってところがやっぱりある。ですから、そういう点で今日みたいにこういう取組の知見を深めていきながら、何が他の自治体の方々、特にマンパワーが足りないような小さい自治体の方々にプラスなのか、というところもリーダーとして考えて進めていただければというふうに思います。どうもありがとうございました。

司会:

ありがとうございました。
 それでは続きまして、永瀬様からもお願いしてよろしいでしょうか。お願いいたします。

日本Tableauユーザー会CCO 永瀬様:

本日はこのような機会いただきまして、本当にありがとうございます。私自身、普通の一般企業に勤めていまして、オープンデータコミュニティの活動をしていることからご縁があってこの場にいさせていただいています。東京都が様々なオープンデータの試みをされているということも理解していまして、そこにご意見させていただけることがすごくありがたかったです。一都民としても意見を吸い上げてくれるのだと、すごく清々しい気分で終えられました。どうもありがとうございました。

司会:

ありがとうございます。
 では続きまして、デジタル庁の丸田様、お願いできますでしょうか。

デジタル庁 丸田様:

河村先生のお話からは、色々と勉強になったなと思っております。自治体でも条例だとかのオープンデータ化ってまだまだ進んでないなと思っていますし、法律や条例って他の法律・条文との関連性がかなり複雑なので、そこをいかにわかりやすくデータを作っていくのかが、これからの課題なのかなと感じているところです。
 永瀬さんのお話のところでは、モチベーションをキープしていくのが大事だよねっていうところが持続性にもつながるっていうところで、もうその通りだなと思いました。まあ、逆にそこが一番難しいところでもあるなと思いながら伺っていました。
 いろいろとお話を伺いながら課題もたくさん浮かんできて、我々国としても、これから東京都、また区市町村とも一緒に考えていきたいなと実感しています。私からは以上です。

司会:

ありがとうございます。
 それでは続きまして、GovTech東京の畔上様からもお願いできますでしょうか。

GovTech東京 畔上様:

オープンデータの正規化の注力ポイントの決め方は大事だと思っています。総花的に対応すると、対応し切れず、また持続的な活動になりませんそのため、分野(経済価値、社会価値)を決めて計画づくりが必要だと思います。

司会:

畔上様、ありがとうございました。

それでは最後に、小林部長より本日のラウンドテーブル全体を通してご発言をいただければと思います。

デジタルサービス局 小林部長:

本日大変ありがとうございました。皆様方から、とても示唆に富んだご意見・ご発言をいただけたかなと思っております。
 河村先生のお話しに対してですが、我々が仕事するときには執行機関としていろいろ検討して、必要に応じて条例出したり議会の質疑を受けたり、そういう関係性が中心にありますが、確かにおっしゃる通り、議決機関としてのオープンデータという視点はなかなかこれまで感じたことがなかったので、すごく目から鱗でした。当然考えなきゃいけないし、考えるにあたってどういう検討体制が必要かということが勉強になりました。
 それから、過去のデータにどう向き合うかっていうことは、これまでは情報開示請求制度とかがあって、それに個々に応じていたものが、オープンデータということで、出せるものを出していこうというやり方で今までやってきた。その中で、やはり、いろんなものをLLMの材料にしていくっていうことを考えると、当然、過去の紙データはすごく重要な財産かなと思っています。今後そこにどう取り組むのか、当然コストはかかると思いますが、どんどん技術も発展していけば、「とりあえずスキャンすればいいよ」みたいなことかもしれませんけれども、こちらについてもとても勉強になりました。
 永瀬様の「ゴールを明確化する」ということはまさにおっしゃる通りで、我々はまずあるものを出す、と言いますか、庁内各局に頭を下げてデータを出してもらう、みたいなところがあります。区市町村もなかなかオープンデータまで手が回らないという中でご協力いただいて、今までやって来たのかなと思っています。けれども、どうあるべきか、どこを目指すかのゴールをしっかりと認識しないと、対策もブレてしまうのかなということで、貴重なご指摘いただいたと思っております。
 あと、デジタル庁さんも一自治体のオープンデータの取組に毎回ご参加いただきまして、本当に感謝しております。まあ、オープンデータ推進がもしかしたら東京都よりも進んでいるところがあるかもしれませんが、他の自治体とも連携して東京都が頑張ることで、他の自治体にも力添えできたらと思います。そういった面で見ても、デジ庁さんのご参加っていうのはありがたいと思います。引き続きご協力をよろしくお願いいたします。

我々は決して専門家集団ではない事務職中心ですが、そういった中で畔上さんをはじめとしてGovTech東京は専門家集団ですので、引き続き我々もGovTech東京さんの方にデータの在り方とかの専門的な知見もお借りしながら、東京都のオープンデータ化を進めてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

司会:

小林部長、ありがとうございました。また、会場にてご出席いただきました登壇者やオブザーバーの皆様、オンラインでご参加をいただきました職員の皆様、本日は本当にありがとうございました。
 最後に、アンケートのご協力をお願いいたします。チャット欄にアンケートのURLをお送りいたしますので、オンラインでご参加の皆様にはぜひご回答をお願いいたします。本日のラウンドテーブルの内容につきましては、東京都オープンデータカタログサイトにて議事録を公開する予定です。また、事業者様とのヒアリングを通じ、オープンデータ化のご要望があったデータの所管部署に対しましては、デジタルサービス局から該当データの公開をご相談させていただく予定ですので、その際はどうぞご協力いただけますと幸いです。

それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。大変貴重なご議論をいただきまして、誠にありがとうございました。